さくら眼科クリニック

〒305-0028 茨城県つくば市妻木1424
コラム 日々のつれづれ

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緑内障の最新治療

緑内障とは?(視神経が傷む病気)

眼の解剖図:緑内障の仕組み

眼圧の上昇により、視神経乳頭が圧迫され、視神経線維が傷害される仕組み

用語解説

【房水(ぼうすい)】:目の中を循環している透明な水。排出路(線維柱帯)が詰まると眼圧が上がります。

【視神経乳頭】:視神経線維が束になって眼球から脳へ向かう「出入り口」の部分。ここが圧迫されると神経が傷みます。

【視神経線維】:網膜で受け取った光の情報を脳に伝える神経の束。一度傷むと再生しません。

⚠️ 重要なポイント

  • 日本人の失明原因第1位(近年増加傾向)
  • 40歳以上の20人に1人、70歳以上では10人に1人が緑内障です
  • 緑内障は自覚症状がほとんどないまま進行します
  • 視野が欠けても、もう一方の目や脳が補完するため気づきにくい
  • 失われた視野は回復しません
  • 早期発見・早期治療が唯一の対策です

眼圧の日内変動

日内変動の基本パターン

日内パターン

多くの人では朝方(早朝〜午前中)に眼圧が最も高く、日中から夕方にかけて徐々に低下します。夜間(睡眠時)に最も低くなることが一般的です。

変動幅の重要性

眼圧が一日の中で5mmHg以上変動する場合、視神経へのダメージリスクが高まるとされています。

体位による変化

仰向け(仰臥位)では眼圧が上がりやすいため、睡眠中の眼圧上昇にも注意が必要です。

眼圧変動の比較

朝方 日中 夕方 夜間 ☀️ 🌞 🌇 🌙 視野障害リスク↑ 10 15 20 25 眼圧 (mmHg) 0時 6時 12時 18時 24時 5mmHg 10mmHg以上 朝方の急激な眼圧上昇 健常者(小さな変動 3〜6mmHg) 緑内障(大きな変動 8〜12mmHg以上)

💡 臨床的意義

  • 朝イチの眼圧測定が重要(一日で最も高い時間帯)
  • 日中の診察時だけでは眼圧の「ピーク」を見逃す可能性
  • 自宅での眼圧測定や、複数回の測定が推奨される場合も
  • 治療の目標は、眼圧の絶対値を下げるだけでなく、24時間を通じて眼圧を安定させること

病気を正しく理解し、心配し過ぎない

早期発見・適切治療で視機能を守る

緑内障はゆっくり進む病気ですが、定期検査と治療の継続で進行を抑え、日常生活を長く保てます。

治療のゴール

  • 失明を防ぐこと(完治ではなく進行抑制が目標)
  • 生涯にわたり「見える生活」を維持すること
  • 多くの患者さんは適切な治療で、日常生活に支障のない視野を保てます

心構え

  • 「緑内障=失明」ではありません
  • 早期発見・継続治療により、生涯の視機能維持が可能
  • 過度な心配よりも、定期通院と治療継続が最も重要

検診/受診のおすすめ

定期検診のすすめ

症状がなくても40歳以上の方は定期的な眼底検査をお受けください。早期発見が視野を守る最大のポイントです。

家族歴があれば要注意

ご家族に緑内障の方がいる場合、発症リスクが約2〜3倍高まります。若いうちから定期検査を受けましょう。

こんな症状があれば早めに受診

  • 視野の一部が見えにくい
  • 眼が痛む、充血する(急性緑内障発作の可能性)
  • 頭痛や吐き気を伴う眼の症状

治療フローチャート(点眼薬 → SLT/MLTレーザー → 手術)

1

第一選択:点眼薬

眼圧を下げる効果。毎日の使用が基本。

2

第二選択:SLT/MLTレーザー

点眼で不十分な場合に追加し、房水の流れを改善。

3

手術(カフーク/マイクロシャント)

より確実な眼圧コントロールを目指す。

治療選択の判断ポイント

目標眼圧未達/視野進行 日内変動 遵守状況(つけ忘れ) 副作用 生活スタイル

緑内障の5種類の薬

チモロールXE

チモロールXE

分類:β遮断薬

用法:1日1回

作用:房水産生を抑制

ブリモニジン

ブリモニジン

分類:α2作動薬

用法:1日2回

作用:産生抑制+排出促進

ドルモロール配合剤

ドルゾラミド・チモロール配合剤

分類:CAI+β遮断薬

用法:1日2回

作用:房水産生を強力に抑制

ラタノプロスト

ラタノプロスト

分類:PG関連薬

用法:1日1回(就寝前)

作用:ぶどう膜強膜流出路からの排出を促進

グラナテック(リパスジル)

リパスジル

分類:ROCK阻害薬

用法:1日2回

作用:線維柱帯の収縮を緩め、房水排出を促進

治療の全体像(軽度→重度への”階段”)

点眼薬(軽度)

一日1〜3回の点眼で眼圧を下げる

SLT/MLTレーザー(軽〜中)

線維柱帯にレーザーを照射し、房水の流れを改善する外来処置

タンゴプロ SLT/MLTレーザー

手術(中〜重度)

カフーク手術/マイクロシャント手術
より確実な眼圧コントロールを目指す低侵襲手術

カフーク手術器具 マイクロシャント

点眼薬 vs SLT/MLTレーザー(要点比較)

項目 点眼薬
(例:ラタノプロスト/チモロール など)
SLT/MLTレーザー
(当院採用例:タンゴプロ)
効果の持続 毎日の点眼が必要
(つけ忘れで効果が途切れる)
1回の施術で数ヶ月〜数年持続
(再施術も可能)
副作用 充血、色素沈着、まつ毛伸長、
呼吸器・循環器への影響など
一時的な炎症・眼圧上昇
(多くは数日で改善)
治療の手間 毎日の点眼が必要
(外出先・旅行時も継続)
外来で1回約5〜10分
(その後の点眼が不要または減らせる)
費用 継続的な薬剤費
(長期では高額になる場合も)
初回施術費用
(保険適用、長期的にはコスト削減の可能性)
適応 ほぼ全ての緑内障タイプ 開放隅角緑内障が主
(閉塞隅角には不向き)

レーザー治療(SLT・MLT)

タンゴプロ SLT/MLTレーザー機器

当院導入:エレックス社タンゴプロ(SLT/MLT対応)

当院導入:エレックス社タンゴプロ(SLT/MLT対応)

当院はSLTとMLTの両方に対応しており、眼の状態(緑内障のタイプ・進行度)に応じて最適な治療を選択します。

SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)

  • 対象:開放隅角緑内障・高眼圧症
  • 仕組み:線維柱帯の色素細胞を選択的に刺激し、房水排出を促進
  • 特徴:周囲組織へのダメージが少なく、繰り返し施術可能

MLT(マイクロパルスレーザー線維柱帯形成術)

  • 対象:SLTと同様(開放隅角緑内障・高眼圧症)
  • 仕組み:短いパルスで熱ダメージを最小限に抑えながら効果を発揮
  • 特徴:より低侵襲で、炎症反応がさらに少ない

💡 治療の流れ

  1. 点眼麻酔:痛みはほとんどありません
  2. レーザー照射:約5〜10分で完了
  3. 帰宅:日帰りで、当日から通常生活が可能
  4. 経過観察:数週間〜数ヶ月で効果を判定

カフーク手術の仕組みと概要(従来手術との比較)

Kahook Dual Blade

Kahook Dual Blade(KDB):線維柱帯を選択的に切除する器具

Kahook Dual Blade(KDB):線維柱帯を選択的に切除する器具

  • 手術時間:約5分
  • 切開幅:約2mm
  • 切除範囲:線維柱帯の一部を精密に切除し、房水の流れを改善
従来の緑内障手術
(トラベクレクトミー)
カフーク手術
入院:日帰り可能だが、状況により3〜7日入院する場合もある 入院:基本的に日帰り
手術時間:30〜60分 手術時間:約5分
侵襲度:切開が大きく、濾過胞を作成するため術後管理が複雑 侵襲度:低侵襲で術後回復が早い
合併症:感染、低眼圧、濾過胞関連の問題など 合併症:比較的少なく、成績良好

✅ カフーク手術の利点

  • 短時間・低侵襲で患者さんへの負担が少ない
  • 日帰り手術が可能
  • 従来の手術に比べて合併症が少ない
  • 術後の回復が早く、日常生活への復帰がスムーズ

マイクロシャント手術(従来手術との比較)

プリザーフロ® マイクロシャント緑内障ドレナージシステム

プリザーフロ マイクロシャント

PRESERFLOマイクロシャント実物

マイクロシャント埋込イラスト

埋込位置と仕組み

  • 微小なチューブ型デバイス
  • 前房から結膜下へ房水を排出
  • 手術時間:約10分
  • 日帰り手術が可能
  • 低侵襲で回復が早い
従来の緑内障手術
(トラベクレクトミー)
マイクロシャント手術
1週間の入院が必要 日帰り手術が可能
手術時間が30〜60分と長め 約10分の短時間で完了
切開が比較的大きく、回復に時間を要する 低侵襲で術後の回復が早い
濾過胞の管理が必要で、合併症リスクがある 成績良好(症例により異なる)

✅ マイクロシャント手術の特徴

  • 入院不要(多くは日帰り)
  • 低侵襲・回復が早い
  • 成績良好(症例により異なる)
  • 微小なチューブで房水を結膜下に排出し、眼圧を下げる

早期発見が第一(40歳から定期的に)

定期検査の重要性

40歳以上の方は、症状がなくても年1回の眼底検査・眼圧測定を受けましょう。

家族歴がある方強度近視の方は、年2回以上の検査が推奨されます。

検査項目

  • 眼圧測定:緑内障の基本検査
  • 眼底検査:視神経乳頭の状態を確認
  • 視野検査:視野欠損の有無・進行度を評価
  • OCT(光干渉断層計):視神経線維層の厚みを測定

⚠️ 緑内障早期発見のカギ

緑内障は初期段階では自覚症状がほとんどありません。視野の異常は進行するまで気づかないことが多く、気づいたときにはすでに重度の視神経損傷が起きている可能性があります。

  • 自覚症状は頼りになりません:視野欠損は徐々に進行し、脳が補完するため初期症状に気づきにくいです
  • 40歳を過ぎたら定期的に眼底検査を:40歳以上で緑内障リスクが上昇します。年に一度は眼底検査を受けましょう
  • 家族に緑内障患者がいる方は要注意:緑内障は遺伝的要素があり、血縁者に患者がいると発症リスクが2〜3倍になります
  • 早期発見で視機能を長く維持できます:早期発見・早期治療により、視野障害の進行を効果的に抑制できます

まとめ:緑内障治療の4つのポイント

1

早期発見

40歳を過ぎたら定期的な眼底検査を受けましょう。自覚症状は頼りになりません。血縁者に緑内障がいればより注意が必要です。

2

継続治療

点眼薬の毎日の使用、レーザー・手術後の経過観察を欠かさないこと。自己判断での中断は進行を早めます。

3

定期通院

視野検査や眼圧測定で治療効果を確認。数ヶ月〜年単位での経過観察が必要です。

4

正しい理解

緑内障は「治す」のではなく「進行を抑える」病気。適切な治療で生涯の視機能維持が可能です。

🏥 不安なことがあれば、いつでもご相談ください

緑内障は早期発見・継続治療で、生涯の「見える生活」を守れます。

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